第1章

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第1章

「言われたことだけやってれば良いとでも思ってるんですか?」 はい、そうです。だって私、派遣社員だし。 と言いそうになるのを堪えて、私は頭を下げた。 「申し訳ありません。白石課長。」 こいつ、私と同じ年なんだよな、とチラリと顔を見る。 (インテリ美形メガネのくせに!)心の中で呟いた悪口が、悪態をついたつもりでちっともけなしてないことに気がついて、思わず吹き出しそうになる。 「注意を受けるのは面白いですか?」 ヒヤリ、とする冷たい口調と眼差しに気づき、慌てた。 「申し訳ありませんでした。以後気をつけます。」 私は急いでデスクに戻る。 (データをまとめろって言うから、まとめたのにさ) 一人で文句を(心の中で)言いながら、PCに向かう。 エクセルにまとめた数値からグラフを作り、箇条書きだった説明を文章に直す。 (会議用資料だったら、先に言えって) 文句を言う代わりに、横目で白石の様子を伺う。彼はもう席には居なかった。 私はため息をついてから、出来上がった資料を印刷して、彼の机に置いた。 猫のイラストのついた付箋に、ペンでメッセージを書く。 『ご確認お願い致します』 ……なんか、楽しいことないかなあ。
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