332人が本棚に入れています
本棚に追加
「どういう意味?」
「母がピアノ教師で……俺が暇つぶしに弾いてると、時折、指導が入るというか…」
「なるほど」
こりゃ、本格的だ。
今年度の新入生注目度No.1のイケメン双子の一人。この容姿でピアノまで達者となったら、またもや注目を浴びるだろう。
「私も聞いてみたいから、良ければ、何か演奏してくれると嬉しいんだけど…」
「……うーん…」
躊躇う様子を見せる古賀君だったけど、窓の外に視線を移した瞬間、先ほどまでの無表情が一変、口角を少しだけ緩ませ、「いいですよ」と答えた。
「何でも良いですか?」
「ええ。いいわよ」
彼はスッと立ち上がり、ピアノの前に座ると、目を閉じて、長く息を吐き出した。
そして、ゆっくりと瞼を開け、静かに鍵盤に手を下ろす。
・
最初のコメントを投稿しよう!