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渡り廊下を渡り、ケイとシンの姿は一年生の教室がある校舎へと消えて行った。
その途端、満たされた筈なのに、襲い掛かる不安。
それを振り切るように、あたしはグッと口を引き締めて、窓に背を向けた。
「今年の体育祭は、あの双子が注目の的になるだろうなぁ」
麻里は、呑気な声でそう言うと、やっと窓から離れて動き出す。
肯定も否定もせず、あたしは曖昧な笑顔を麻里に返して、自席に戻った。
タイミングよく、校内にチャイムが響く。教室内は、それを合図にそれぞれが着席してゆく。
あたしは、気を取り直して、一限目の教科書を出そうと鞄を覗くと、あの手紙が視界に入った。
何で、持ってきちゃったかな…
アホだ。あたし…
そんな気持ちとは裏腹に、手紙を取り出した。
キョロキョロと周りを見回してから、恐る恐る、もう一度、便箋を開く。
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