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06 #2
何も話さないのに、すべて通じているような空気。
居心地がいいけれど、どこか物足りないもどかしさを抱えて。
『セツ、図書室行けばいいのに』
『BGMがあるほうがいいんだよ。下手くそでも』
『失礼な!』
『アハハ!』
時折話すのは、憎まれ口ばかり。
特別だった。
だから、もっとって思ったけれど、その一端でも崩れるのが怖くて。
大切だった。
けれど、その存在が当たり前すぎて。
過信していた。私達のこの世界は崩れないと。
「俺は……してる」
「え?」
聞き取れず、聞き返す。
私を真っ直ぐ見つめて、もう一度、セツが繰り返した。
「…俺は、後悔している」
「ーーッ!」
「今でも。今まで、ずっと」
突然、心臓を鷲掴みにされたように、ギュッと胸が苦しくなった。
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