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だけど、それはすべて間違いだった。引っ越しの日、死ぬほど後悔した。 「待って!セツ!!このまま別れるなんて、嫌だ!!セツーーーッ!!」 悲痛な叫び声が俺の耳に届いたのは、すでに車が発車した後。 サイドミラーに、号泣しながら追いかけてくるサユの姿が見えた。 振り返れなかった。サユに合わす顔が無くて。 誰よりも彼女を傷つけたのは、無理やりキスした松尾でもなくて、俺自身。 何もかも確かめることなく、逃げ出した自分が許せなくて。 いっそ、俺のことを嫌いになって欲しくて。 俺は、車の中で泣いた。 二度と会えない初恋の人に、何度も謝りながら。 「先生ってさ、ひょっとして、辻先生と昔からの知り合い?」 「は!?」 弟君がいきなりそんなことを聞くから、固まった。 ・
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