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以前、酔っぱらった席で、サユとのことをぶちまけた。
良は、長年、俺が恋愛に一歩腰が引けている謎が解けたって、笑っていた。
今まで、それなりに恋愛をしてきたけれど、熱くなるものがなかった。どこか醒めていた自分。
それが、サユのことが引っ掛かっているとやっと気が付いたのは、25を過ぎた頃だった。
『お前の、そのトラウマを解放してくれる女が見つかればいいけどなぁ』
ちょっと切なそうに笑った良。
きっと、覚えていたんだ。その時、サユの名前を教えたから。
そして、偶然かそれとも捜したのかどうかはわかないが、サユの所在を知り、昨年、俺にここの高校の採用試験の情報を教えたんだろう。
ちょうどその頃、教師として悩み、煮詰まっていた俺は、環境を替えるためにその話に飛付いた訳だ。
良の思惑通りだとは気付かずに。
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