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驚いて音の方を振り向くと、脚立に下敷きになっている体操服を着た生徒が見える。
「コハル!!ケイ!!」
慎太郎が走り出す。そして、俺もそれに続いた。
あれは…倉橋さんと恵太郎なのか?
ひょっとして、あの手紙の差出人が?
走りながら脳裏に過る、二人それぞれに届いた手紙。
体育倉庫前は人だかりが出来ている。
「どけ!!皆、下がれ!!」
生徒達を押しのけながら、慎太郎と一緒に二人の傍へと駆け寄ると、ちょうど、体育教師二人が脚立をどかした後だった。
そして、そこには頭から血を流し横たわる恵太郎と、泣きながら必死に彼の名を呼ぶ倉橋さんがいた。
「コハル、大丈夫だから…」
恵太郎が倉橋さんの頬を触り、頭を撫でて、優しく微笑んだ。
その二人の崇高な世界に、誰も言葉が発せずに、見惚れてしまっていた。
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