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彼女だ。
俺にもわかった。彼女は俺の顔を見るなり、サッと顔色を変えた。
教師をしていると、生徒のちょっとした表情で、何か教師の勘のようなものが働くようになる。
一瞬だけど見逃さなかった。彼女の動揺は、明らかに周りの生徒とは異なる。
俺は、彼女から視線を逸らして、ゆっくりとそちらに向かって歩く。
すると、その子が後ずさりして、くるりと反転して、走り出した。
彼女の姿を目だけで追う。今、走って、彼女を追えば、目立ってしまう。だから、焦る気持ちを抑え、早歩きで追いすがる。
東校舎で消えた彼女の後姿。
やっと生徒の姿が減り、俺は一気に駈け出した。
見つかるか?
いや、絶対に見つけなければ。
「うわッ!」
東校舎の廊下の角を曲がると、偶然サユとぶつかりそうになった。
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