219人が本棚に入れています
本棚に追加
「何、どうしたの?慌てて…」
「こっちに走ってきた女子を見なかったか?」
「え?ああ…さっき、校舎裏の方へ」
「その子が差出人だ!!」
「ええッ!?」
俺がまた走り出すと、サユもすぐに脱兎のごとく駆け出し、俺についてくる。
「恵太郎が倉橋を庇って、大けがを負った」
「そんな…!」
「だから、絶対に見つけてくれ!サユ!お前はそっちへ!俺はこっちから捜す!」
「わかった!!」
二手に分かれ、彼女を追う。
人気のない裏門まで来て周りを見回すと、どこからかすすり泣く声が聞こえる。
そっと声のする方へ近づいてゆくと、木の影に隠れ、座り込んでいる一人の生徒。
サユも反対側からやってきて、近づいて来る。
「君が差出人か…?」
俺の問いかけに、彼女がゆっくり顔を上げる。そして、サユが悲しそうな顔をして、呟いた。
「あなただったの……中田さん…」
・
最初のコメントを投稿しよう!