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「あたしも…」
小さな声で、もう一度、溢れる想いを口にしようとした時、ケイの顔がゆっくり近づいてくる。
ぼんやりと見つめ続けていると
「目、瞑って…」
甘い声で囁かれて、言われるまま、ゆっくりと瞼を閉じた。
そして……
唇に初めての感触。
それを自覚した途端、肩に力が入り、ギュッと瞼を瞑る。
一瞬なのに、時間が止まる。
唇の感触が元に戻ってゆくと同時に、瞼に感じていたケイの気配が遠のいて。
恐る恐る目を開けると、ふぁっとため息が出て、力が抜ける。
「コハル」
目の前には、ケイの端正な顔。
今まで何度も名前を呼ばれていたのに、今までとは違う感覚。
甘い甘い余韻。
夢を見ているみたいにフワフワして。
ケイの感触が残る自分の唇を、両手隠す。
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