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「石野さん…?」
「--ッ!」
私がぼそりと呟いたその名前に、彼女はガバッと顔を上げた。
そうだ…校歌の伴奏に不満を持っていたのは、中田さんと仲の良い石野さんのほうだ。
『ズルーイ!倉橋さんだけ~』『あの1年の古賀君とさぁ…』
ふくれっ面していた石野さんを思い出す。
「ち、違います!!」
「違うって?」
「サツキちゃんは、何にも知らないの!」
サツキちゃんとは、石野さんの下の名前。
「あたしが…あたしが勝手に……勝手にやったんです…」
どんどん語尾の声が小さくなり、縮こまる中田さん。
やっと…白状した。
私とセツは、お互いに目を合わせて、頷き合った。
一度でも吐露してしまえば、あとは容易い。
一人ではか抱えきれなくて、結局、全部吐き出してしまった方が楽になれるのだ。
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