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BGMのように聞こえてくるピアノの音は、『トルコ行進曲』から『別れの曲』へと。 独特なアクセントのつけ方に、これは古賀君一人が弾いていると思えた。彼女のリクエストに応えたのかもしれない。 この曲は『別れの曲』という邦題がついているけれど、本当はショパンが祖国への郷愁を込めた楽曲。 美しい旋律とセツの眼差しが、私に何かを切なげに訴えかけてくるように感じる。 一向に伴奏の練習に移らない二人だけれど、今はそれどころじゃなかった。目の前にいるセツに心を奪われて。 「恵太郎は…幼馴染という立場に驕らなかった。 きっと、彼女との繋がりを誰よりも強くするために、懸命に努力したんだ」 もう一度、音楽室へと視線を向けるセツ。 私の視線もつられて動く 。 ・
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