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「あたしもね。お母さんに、もっと遅く産んでくれたら良かったのにって言ったことあるよ?
でも、役所にまで手紙はかかなかったけど!アハハ!」
「…笑うなよ」
不貞腐れた表情をするケイ。
「だって、可愛いんだもん」
「可愛いって言うな」
「フフフ…」
あたしが笑みを漏らすと、ケイもフッと表情を緩ませ、微笑んだ。
他の人には向けない、その優しい眼差しは、ずっと昔から、あたしだけの特別なもの。
「不思議だなぁ。物心ついた時には、あたしの中でも、ケイが特別な男の子だったよ」
「良やシンもいただろ?」
「良ちゃんもシンも、確かに他の男の子達とは違うけど、あくまでも兄弟って感じで…
ケイと同じような特別な感情を持ったことがないなぁ」
伺うように聞いたケイに、あたしは飄々と応えた。
本当にそうなのだ。二人に、ケイに対するような強い感情を持ったことはない。
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