第1章

2/9
前へ
/73ページ
次へ
ピピピピッ ピピピピッ… ゆっくりと浮き上がってくる意識、 クリアになる音、 今なにに包まれているかの感覚まで鮮明になる。 「んーーー…」 小さく唸りながら、もぞもぞ動く。 そういえばごみの日じゃん、今日…。 動かなければならないことを感じながら、目覚ましに向かって手を伸ばそうとする。 ピッ 私のじゃない手が、ぱしっと目覚ましの音をとめた。 「もー…。うるさい…」 「ちょっ、亮! 寝ちゃだめーーーっ!」 またもぞっと布団にもぐりこむ彼を慌てて止める。 もうすっかり目が覚めた私 ーーーーこと、笹川和紗(ささがわかずさ) まどろむ彼氏 ーーーーこと、長岡亮太(ながおかりょうた) 「かず、おはよ‥」 へらっと笑いながら、きゅっと私の腰に手を回す姿に、 きゅ~ となる、単純な、私。 ぱふっ 「やわらか‥」 「ばか、起きるよっ!」 「やだ。もうちょっと、こうしてる」 もうちょっとって、どんくらいよ? うずめていた顔をあげ、近づいてきた顔。 奪われる唇。 「‥っ」 そのまま、キスされて、気づいたら見上げるかたちになっている私。 「‥かず」 そんな風に呼ばれると、 また顔が熱いまま、 …身を任せるしか、ないっていうか。 .
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

252人が本棚に入れています
本棚に追加