第1章

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**** 「しかしすごいよねー。和紗は」 「? なにが?」 「んー、マジメだし、かわいーし。 それに亮太の愛を惜しみなく受けとめてて、守られてマスってかんじが」 「え?イヤミ?」 「正解。わかってきたわねー和紗」 後ろに音符マークがつきそうなくらい、わかりやすく嫌味ったらしくいうのは、 鮎川はるな 大人っぽい雰囲気の同級生で、同じ栄養学部の友達。 今日の講義も終わり、18時。 少しずつ寒くなりはじめた今の時期、夕焼けは長いけれど、だんだん遠くから暗くなってきてる。 栄養学部の校舎のすぐ近くのテラスは、私たちの、絶好の場所。 綺麗にアッシュブラウンにそめられたはるなの髪が、まだ残ってる夕焼けを反射して赤く光ってまぶしい。 秋晴れというか、ほんときれーな天気だったなぁ、今日。 はるなは、長い爪をカチカチと鳴らしながら話す。 私は、シャーペンを走らせながら、明日の予定の確認。 「まぁ私なら無理だけどね、 あいつはちょっとうるさすぎて」 「そうかなぁ?」 「うるさいでしょ! スカートの丈が短いだの、お弁当が食べたいだの、チョコは手作りがいいだの、メイク濃すぎだの、マニキュアは変な柄はやめろとか、赤のヒールはやめろとか!」 それは、前にはるなが、 どんな女の子が男は好きだと思う? って、きいたからだと思うんだけど‥。 めんどくさくなりそうだから、言わない。 「あ!ねぇねぇ!そういえば! 今週の日曜日でいいんだっけ?居酒屋の‥」 「あ!うん、そうそう!『ぷらり』! 雰囲気もよくて、お酒美味しいって有名なんだよね~」 「おっけー! 美味しいごはんもあるといいなぁ…」 「…あんたはほんとごはんのことしか考えてないわね」 「デザートも楽しみにしてるもーん」 笑顔でこたえると、はるなもふふふっと笑う。 私たちの最近の趣味。 居酒屋巡り。 はるなはお酒目当て。 私はごはん目当て。 亮が、私とお酒飲むのあんまり好きじゃないから、居酒屋に2人ではほとんどいかない。 将来の管理栄養士さんとして、美味しいごはんを食べることも勉強だとおもって、いろいろなところに行っている。 「たのしみだなぁっ」 「ねー」 すっかり機嫌のなおったはるなは、グロスの光る唇でキレイに笑う。
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