The core~アイの核~

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そのうち別荘に着くと、偉人はいったん入り口で立ち止まった。 「別荘のなかでは静かにしてほしい。足音も立てないように」 そうして、萌絵には理由を訊ねる間も与えないまま偉人はドアを開けた。 有無を云わさずなかに促されてしまい、萌絵は従わざるを得なくなる。 けれど、なかに入って再び立ち止まったとたん、偉人が何のために静かにしろといったのか、多英と義母の符合する疑問の答え、そして、“いつも”何があったのか、それらすべてがはっきりした。 何が飛びだそうとしたのか自分でもわからないまま、萌絵はとっさに自分の口を手で覆った。 その封じたものを代弁するかのように、ひと際高い悲鳴が響く。 いや違う。 それは悲鳴でも、助けを求める叫び声でもなかった。
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