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大きな岩を抜け、海岸沿いに転がった岩の間を蛇行しながら通りすぎる。
磯遊びをする人が散るなか、大人五人くらいはすっぽりと隠すほどの大きな岩のまえで立ち止まり、偉人は背後を振り向いて辺りを見まわす。
それからその岩の日陰に入った。
そこには、寄りかかっているのか支えているのか、手頃な大きさの岩があり、偉人は座るよう身振りで示した。
広い岩の面が砂浜を遮断して、多英たちからはまったく死角だ。
もとい、望遠鏡でもなければだれかを判別することは難しいくらい離れている。
邪魔もなく、いざふたりになったところで、萌絵は何から切りだしていいのかわからない。
偉人から口火を切ることもない。
ショックというよりも、積み木を積みあげていたら突然、土台の真ん中が持ち去られてしまったような、それまでの努力はなんだったのか、萌絵はそんな虚しさを覚えていた。
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