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「本当のことを知りたいだけ。いまのことだけじゃない、全部を知りたいの」
しばらく偉人はじっと萌絵を見下ろしていた。
「知ってどうする? どうなる?」
「わからない。でも、知らないふりなんてできない。このまえの土曜日も……偉人くんが柚似を預けにきた日もきっとふたりは一緒にいた。わたしたちのことも……わたしは偉人くんみたいに、なんでもなかったようなふりはもうできない」
優衣を奪った蝶子と、断罪することを放棄して優衣を軽んじた優。
忘れられない時間と引き換えに優衣を忘れた萌絵。
みんな同罪だ。
「なんでもなかったふりをしてるつもりはない。おれは、萌絵ちゃんを傷つけることになっても取り戻す。その機会を待ってるだけだ」
萌絵は応えられなくてただ首を横に振った。
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