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次第に、胸が苦しくなってきた。私は涙を手で拭うと地面に体育座りをし、その場に踞る。彼等と自分は違う、劣等感のようなナニかをもやもやと心の奥底から感じる寂しさと悲しみは癒える事は無かった。そんな時だった、ザァーと音が聞こえる。ノイズが走るように其れは降った雨に混じり色無き世界に、ただモノクロに染まっていたのだった。やはりそうなのか
世界は、自分の姿見で成り立っている。彼等は何かを見付けて帰還した、まだ居るのに私は此所に。嘆いた所でどうにかなる訳は無いが、やはり孤独に思える。虚しい
「君も、此の世界に居たの?」
「えっ、他にも人が居たの?成る程ね。偶然はこれが最初って訳か、私は倉依川霖音(クライガワリンネ)よ」
踞る顔をゆっくりと、見上げる形で声のする方を視た。其れが本名だったのかはもう、忘れてしまった。長い年月の間に自身は名すら思い出せない、そんな自分が情けなく思える。視線を彼に移すと、其処には茶髪で異世界何かに出てくるような格好をした少年が立っていた。羽毛を編んだローブだろうか、不思議な雰囲気を漂わす彼
表情は、苦笑を浮かべる様子だった。成る程此所は魔法の世界なのか、そう勝手に納得していると。少年は訝しげに首を傾げ、大丈夫かと目で訊いている。眉を潜めて、やや心配気に此方を見詰める彼に私は平気だからと。素っ気なく返事を返す、しかし分からない
「あなたは誰、どうして私何かに話し掛けたの。もしかして同じ孤独だったとか?」
「そうだよ」
冗談で訊いたつもりだった、なのに少年は間も開けずに即答で返事を返した。そんな彼に驚きながら、私は小さな声で。そう、と呟きながら立ち上がる。よく見れば少年は左腕に包帯を巻いていた、怪我を負っていたのか。雨も降り始めたのに傘も差していなかった
推測するに、出掛ける途中に雨が降り雨宿りに来たと言う所か。恐らく偶然私を見掛けたのだろう、此所は屋根がある為に雨に打たれる心配も無い。そう思案していると少年は突然自身の腕を抑え、その場に踞ってしまった。けれど
「っ、何で誰も助けないの。ねぇ。誰か助けてよ!」
「無駄なんだよ、周りに居るのは皆。ううん、全部偽りでしかないから」
少年は苦し気に立ち上がり、覚束無い足取りで壁に手を着き。深呼吸をし始める、やがて少し落ち着いたのか彼は。額に油汗をかきながらも、大丈夫と言わんばかりに私に笑顔を見せた。しかしかなり辛そうだ
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