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暗い、此所は何処なのか。ふと思い浮かぶ親の顔、今頃両親は私を探しているのだろうか。其れとも自分何て居なくなって正々しているのか、そうだとしたら悲しくなる。けれど身をもって自分は知った、今まで気付けなかった真実にそう考えていると。此方に近付く人物の姿が視界に映る、やがて開けた世界は。辺りに広がった、
草木も眠る。丑三つ時の刻に事件は起きた、私は深夜目を覚まし。部屋を出て異変に気付く、異様な臭いが鼻をついた。周りは廊下の代わりに赤い炎で囲まれている、所々から黒煙が上がり弟の部屋は既に扉すら見えない。視界は半分目を開けられない迄に酷く汚染されていた、黒煙を吸い込まぬよう私は姿勢を低く屈める。その時
後ろから、ゴオッと音がした。視なくても理解出来る、自室にも火の手が上がってしまったようだ。四方八方を挟まれ、自身は身動きが取れずにいた。そして気付くと此処に私は居ると言う訳だ、しかし辺りに弟や両親の姿は無く。ただ自分一人が道端に立っていた
「そんな、亜喜良(アキラ)は?お母さんやお父さん。何処なの……」
(亜喜良、責めて弟だけでも。お願いだから出て来てよ!)
そんな心境のまま、私は現在暗闇の中に居る。だが可笑しい、無音の辺りは異様な気配を漂わせていた。静寂に静まり返った世界、其処は最初に来た時と似ている。探しても追い掛けてもその背中に追い付けない、幼い弟はあの火事によって死んだのだろう。私は認めざるを得なかった、何故突然に
その場に膝を着き、泣き崩れる。すると聞き覚えのある声がした、亜喜良だ。けど何処に居るのか、今度こそ見失わないよう。走り出すが姿は無かった、楽しげに笑う弟の笑い声だけが響く。本当に幸せそうだ、其れだけで安堵する
「あはははははっ」
「楽しいね、でもお姉さんとはぐれちゃったんでしょ。早く探さないと」
誰なのか、亜喜良と話す少女の声が聴こえる。私は思わず弟の名前を叫ぶ、その瞬間。黄緑色の綺麗な長髪を生やす少女が、突如目の前に現れた。彼女には見覚えがある、あの子にそっくりだった。恐らく姉妹に違いないだろう、だがその子は私に対して睨みをきかせる。そんな様子に弟は驚愕した
やがて、彼女を見兼ねてか亜喜良が自分から。此までの経緯を話し始める、話を聴く限り少女は弟の世話をしていたようだった。優しい性格の彼女に私は弁解するよう、お礼を言って頭をさげる……
「私は夏々だよ、じゃあね!」
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