エニグマ・ミステリー 起

141/163
530人が本棚に入れています
本棚に追加
/482ページ
そして、遂に奴の考えていたことが分かった。排水管を背に奴の動きが止まる。カチャリ、カチャリと二回音が聞こえた。 「さぁ、殴れば良いよ」 殺せよ、と奴の口は動いていた。声にはなっていないが、確かに奴は、そう言った。 言われるままに拳を作る。振り上げ、奴の顔に……。 「ふざけるな!俺には身動き取れねぇ奴を傷めつける趣味はねぇんだよ!」 振り上げた拳を解き、奴の胸倉を掴んだ。動きに連動してカチャリという金属音がする。 奴は自らの腕に手錠を掛けやがったんだ。排水管を間に挟んでな。
/482ページ

最初のコメントを投稿しよう!