プロローグ

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「……向こうの小沢に蛇が立って」 誰に聞かせる訳でもなく。 泉鏡花の『草迷宮』を口ずさむ。 「八幡長者の、おと娘」 『草迷宮』を通して思い出すのは、狂おしいほどの温もりと快楽――。 「よくも立ったり、巧んだり……」 例え―― 例え、そこが魑魅魍魎の潜む場所だったとしても―― あの二人に会えるのならば―― 愛しき母の温もりを求めて旅に出た『草迷宮』の青年のように―― 私もあの二人を求めて、望んで止まないのだと―― ただ、ただ、二人が愛しいと思いを馳せるのだった――。
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