Aren't we happy?

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 いつものようにあいつの部屋でベッドに押し倒してキスする時のようにごく自然な流れだった。 「…んっ!……ぁ…ちょ!」  必死に抵抗するあいつの後頭部を抑えつけ、いつもより深く唇を味わった。舌を何度も絡め、音を立ててあいつの唾液をすすり、何度も何度もあいつを貪った。飲みなれない酒のせいか、あいつの唇が熱いせいか…頭がボーッとしてきた頃、急に強い力で体を突き飛ばされた。 「馬っ鹿じゃねっ!!お前、キス長すぎ!マジきもちわりーよ!やりすぎだっての!」  早口で罵ってきた目の前のあいつは、頬を紅潮させ肩で息をしている。  それがあいつの本音じゃないとわかっていても随分な言いようだと思った。周りの連中は「すっげーお似合いじゃん」なんてはやしたてて面白がっている。俺はバレるわけがないと思っていたが、あいつはバレたらどうしよう、と不安だったに違いない。  そんなつよがる姿もいじらしくて、俺はもう一度あいつの腕を掴んで引き寄せた。 「忘れられない夜にしてやるよっ」  そう言ってもう一度唇を奪うと外野のテンションは一気に上がり、大歓声が舞い上がった。ジタバタしながら俺の体を引き離そうとするあいつを無理やり抱きしめて、わざとらしく体を弄った。  一瞬の隙を突いて俺の腕から離れたあいつは「ざッけんなっ!」と俺に回し蹴りを入れてきた。悪ふざけが過ぎた俺へのお仕置きは、目があった瞬間照れ隠しだというのがわかった。  その後もゲームは続いたが、俺もあいつも運良く王様からの命令が当たらずにすんだ。夜も更けて酒も無くなり、居眠りをする奴が出始めると、不毛な祭りは解散の運びとなった。  他の連中と一緒に隣の部屋に戻ろうとしたあいつが俺の方を向くと、ニヤリと笑って言った。 「隣の部屋まで襲いに来んじゃねーぞっ」  その言葉に俺も周りの連中もブッと吹き出した。 「襲わねーよ」  中指を立てて俺が切り返すとあいつも腹をかかえて笑いながら部屋を出ていった。  みんなが寝た後、どっかに連れ込んで襲っちまえば良かったかな。いや、今からでもみんなが起きる前にこっそり隣の部屋から連れだして…早朝のホテルなんてシチュエーション、なかなか無いし。それとも帰りの新幹線のトイレとか。  そんな馬鹿げた事を考えながら、俺は眼鏡を外してもう一度布団に入った。  夕べが忘れられない夜になったのは、俺の方だった。 <了>
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