Go To Drive !

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 まんざらじゃない。  そう気づいたのは夏休みに入ってすぐだったと思う。自分の車欲しさに始めたバイトの掛け持ちは想像以上に忙しく、夏休みはサークルにあまり顔を出す暇が無かった。  ホカ弁屋でとんかつを揚げている時、ガソリンスタンドで車窓を磨いている時、自転車を漕いで帰宅する途中、ふっとあいつの事が頭に浮かんだ。  今頃何やってんだろう、そう思い始めると居ても立っても居られなくなった。らしくもなく毎晩電話をかけたり、サークルの約束とは別で飯に誘ったり、親の車を借りて夜景を観にドライブへも行った。 「アハハ、これじゃあまるでデートだね。」  何気ない将太郎の言葉に、俺の心臓はドキリとした。  そんな流れで俺達は二人で遊びに行く事を、ふざけてデートと呼ぶようになった。  だがデートという言葉を噛み締めるうち、俺は将太郎を恋愛対象として見ている事に気がついた。  それ以来、あいつを車に乗せていない。理性がぶっ飛んで送り狼になるのが怖いからだ。  映画館を出る頃には将太郎もすっかり落ち着きを取り戻し、近くのファミレスで始発を待つ事にした。平日の深夜と言え、都心のファミレスはそこそこ混んでいたが5分と待たず席に案内された。  奥の席を陣取ると、将太郎は映画のどこがよかった、あのシーンがやばかったなんて熱く語りだした。ドリンクバーのコーヒーも三杯目になった頃、将太郎はハッと思い出したかのように呟いた。 「大ちゃんのハンカチ、洗濯して返すね。」 「いや、いいよ、今返してもらっても。」 「ううん、あ、でも…」  そう言いかけて、将太郎は急に視線を落とした。さっきまで流暢に映画の話しをしていた本人とは別人のようだ。 「何だよ?どうした?」  心配して顔を覗き込むと、頬が紅潮している。原因はわからないが、照れくさそうで、少し緊張しているようにも見えた。  反則だ、急にこんな表情しやがって。俺の方も将太郎を直視できなくなった。
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