Go To Drive !

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Go To Drive !

 予想はしていたがこれは酷い。両目から大粒の涙、遠慮なしに流れている鼻水。将太郎はヒックヒックと嗚咽を漏らし泣いていた。零れ落ちる涙は拭っても拭っても頬をつたい、ハンカチはぐしゃぐしゃだ。よくもまあ、ここまで無防備に泣き顔を晒せるものだと感心した。 「これ、使う?」 「…うっ…うう、うん。」   薄暗い映画館の中、こんな事もあろうかと持ってきたタオルハンカチを俺はそっと将太郎に渡した。何年も前にヒットした大作のレイトショー。ホカ弁のバイト 先でよくしてくれるおばちゃんが「深夜の映画館なんてなかなか行けないから、彼女でも誘って行ってらっしゃいよ」とチケットを譲ってくれた。   『動物が出てくる愛と感動のストーリー』なんて柄じゃないけど、将太郎を誘って夏休み最後のデートと洒落こんでいた。いや、男同士でデートと言うのもおか しな話しだ。俺と将太郎は大学のサークル仲間で、恋人同士でもなんでもない。ただ、俺達は周りから何かとセットで扱われる事が多かった。  身長190センチの俺の名前が大地、そして身長160ちょいの小柄な将太郎。サークルの先輩は俺達をデコボココンビと呼び、周りの奴らもいつの間にか「大ちゃん」「しょーちゃん」と声をかけてくるようになった。   田舎から出てきたばかりで友達の少なかった将太郎は、この状況をを好意的に受け入れていた。俺と一緒とわかれば「大ちゃんが一緒でよかった」と、はしゃ ぎ、俺が居なければ「なんだ、大ちゃんと一緒じゃないのかぁ」と、寂しがる。いつの間にか俺は、将太郎が隣に居る事が当たり前と思うようになっていた。  自分の感情をストレートに表現し屈託なく笑う将太郎が、子犬のようにじゃれついてくるのが嬉しくてしょうがなかった。
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