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-epilogue-
「大木ってさ、俺とやりたいって思ってんの?」
「えっ…!?」
川口の唐突な質問に、俺は思わず食べかけのチキンナゲットをトレイに落とした。
学校帰りに寄ったファーストフード店で、ハンバーガーを食べながらする話題じゃないだろ。
「だって付き合ってたら、結局最後にはそういう事するじゃん?」
「…あ、ああ、まぁね。」
いつかはこういう話題が出るだろうってわかってはいたけれど、いざとなるとどう言ったらいいものか。話をふってきた川口自身は、相変わらずしれっとした顔でハンバーガーを食べ続けている。
そりゃあ川口と付き合う事になってから、俺自身何度も考えてきた事だった。
最初はあんなに緊張してガチガチだったキスも、回を重ねる毎に馴染んでいって。
体育館裏で貪るように求め合うキス、玄関の靴箱の影で人目を忍んで掠めるようなキス、黄昏時の公園で並んでベンチに座ってそっと交わす優しいキス、そんなキスの連続の先に、いつも不安と期待が交じる行為が見え隠れしていて、それを川口自身が求めているのもなんとなく気づいていた。
俺だって普通に健康な15歳だし、相手が女だったら多分とっくにやってたと思うし…!!!
でも川口は男だ。色眼鏡ではどんなに可愛く見えても、あいつには俺と同じものがついてる。
ついてるから嫌だってわけでもなく…どういう手順を踏んでいいのかわからないって事が問題だった。
"男同士でやる"ってのは結局どういう事なのか。だいたい川口の言う"やる"って定義はどこからどこまでを指して言っているのか。それさえもわからない。
っつーかぶっちゃけ怖い。
一年の頃、部活のミーティングが終わらなくて遅い時間に部室のある校舎へ行った時、野球部の部長とサッカー部の部長がおかしな事になっていたのを見た事がある。夕方で薄暗くて、はっきり何をしてるかわからなかったけど、二人共ユニフォームから制服に着替え終わってて、でもサッカー部の部長のYシャツははだけてて、ズボンも膝までずり落ちてて、あああ、それ以上はもう思い出したくない。あの時俺はすごく気持ち悪くなって、家に帰ってから熱を出して寝込んだ。
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