第1章-ゲームスタート-

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「さて、どの程度のもんかねぇ」 手にしているのは鐔のついていない飾り気の無い刀。天音はそれを鞘に収めたまま左手に持っており、そのまま右手で柄に手を掛ける。 「先手は譲ってやるよ」 天音の不遜な物言いを理解したのかは定かでは無いが、猪型モンスター、『ナックル・ボア』が天音に猛進する。常人ならその迫力に気圧されていてもおかしくは無いが、天音はスッと目を細めると内心で小さく呟く。 (見切り、発動) 天音の習得したスキルの一つ、『見切り』。敵の攻撃軌道を先読み出来るAS(アクティブ・スキル)である。 スキルの恩恵によりナックル・ボアの突進のラインが視界に浮き上がる。天音はギリギリまで引きつけてからサイドステップで回避すると、猪は勢い余って木に激突した。 ミシミシミシ、という音ともに木が根元から薙ぎ倒される。その威力を褒めるかのように口笛を吹いた天音は、今度は攻めるべく駆け出した。 「しっ!」 短く息を吐き出すと同時に抜刀、そのままナックル・ボアを切り裂く。その一撃は毛皮を断ち肉を裂いて鮮血を舞わせるが致命傷には至らない。その場で頭部を凪ぐ様に振るうナックル・ボアからバックステップで距離を取ると、天音は再び刀を鞘に収めた。 「ふぅ。スキル込みなら一撃で決められると思ったんだけどなぁ」 実は先程の攻撃で、天音は一つのスキルの恩恵を受けていた。その名も『抜刀術』。鞘から剣を抜いた直後の一撃によるダメージを1.5倍にするというPS(パッシブ・スキル)である。 職業能力(ジョブスキル)の恩恵で攻撃力にもそれなりの自信があった天音が顰めっ面をしていると、怒り狂って興奮状態のナックル・ボアが再び突進を開始した。 「見切り……はクールタイムか」 常時発動型のPSと違い、見切りのような任意発動型のASはクールタイムというスキル使用不可の時間帯が存在し連発出来ない。そしてそんな中で天音がとった行動は回避では無く、迎撃であった。
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