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最寄りの街はルクセルという名の街だった。
外敵の侵入を拒む為か四方をそこそこの高さの壁に囲まれており、街への出入り用に門が備えられている。勿論、其処には簡単な門番が設置されていたが、旅人だと言ったらすんなり通れてしまった事に天音は拍子抜けしてしまったのはつい先ほどの事だ。
天音はルクセルの街にたどり着くまでの間にヘルプを読破し、大凡のゲームシステムは理解していた。取り分け目下の課題はレベルUPとスキル、アーツの習得だろう。この世界で何をすればいいのかイマイチわからないままだが……。
「取り敢えず、ギルドだよな」
あるかどうかは定かではないが恐らくあるだろう。根拠のない自信の元に暫く歩くと、やがてそれらしき建物を見つけた。
「『ギルド・ルクセル支部』。……何で文字読めるんだ?」
見覚えのない文字が並べられた看板。しかしすんなりと文字を解読出来た天音は驚いたものの、そういえば、とセルヴィスの言っていた常識の改変について思い出す。それは恐らくこの異世界の住人たちだけで無く、プレイヤーである自分達にも適応されているのだろう。
目の前の木製の扉を押し、入店。カランコロンと来訪者を告げるベル共にギルドへと足を踏み入れる。
やはりというか、其処はイメージ通り酒場であった。先客達は思い思いの時間をして過ごしており、新たな来客には一瞬だけ視線を向けるものの、それだけだ。
天音は一番奥の受付カウンターとプレートが掛けられた場所へ向かう。
「ようこそ、ギルド・ルクセル支部へ!本日はどういったご用件でお越しですか?」
にこやかな笑顔と共にそう告げたのは金髪碧眼の若い女性。そんな彼女の豊かな表情は、自分のやっているRe:birth world onlineがゲームでありながらゲームでは無いという矛盾を訴えかけて来ているように感じた。
「ギルドに登録しに来ました。……大丈夫ですか?」
一応、ヘルプのチュートリアルからこの世界についての多少の情報、そして最初にやるべき事は把握している。先ず優先すべきは、身分証枚書にもなる『ギルドカード』の発行らしい。
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