58人が本棚に入れています
本棚に追加
「それにしても、すごいな。本当に異世界だ……」
道行く人々だがその格好は天音の見慣れたそれとは全く違う。時たま見掛ける鎧を装備した兵士など地球だったら即刻職務質問レベルだが、一般人らしき人々は天音の着ているような簡素な服ばかりだ。
そんな見飽きる事の無い街並みを進んでいると、やがて一件の宿屋を見つけた。『踊る子馬亭』と意味不明な店名なのはこの際に気にしない事にする。
「すいません、部屋を借りたいのですが空きはありますか?」
「おや、旅のお方かね?部屋は一人部屋なら空いているよ。値段は50イリス。どうする?」
「お願いします。食事はどうなりますか?」
「一食5イリスで提供してるよ」
「じゃあ今日の夜、明日の朝の二食分をお願いします」
「毎度あり。部屋213号室を使っておくれ」
中年の女性に60イリスを支払い、鍵を受け取る。初期ボーナスとして1000イリスを与えられているので残りは940イリス。まだまだ余裕はあるだろう。
二階の突き当たりに位置する部屋を充てがわれた天音は直ぐに部屋にいって休む事にした。
部屋は六畳一間と一人で寝泊まりするには不自由の無い広さ。ローブを備え付けの椅子に掛けた天音は盛大なため息と共に木のベッドに横になると、メニュー画面を開いた。
「にしても……セルヴィスの奴、色々省き過ぎだろ」
思わず天音が愚痴るのも無理は無い。実はセルヴィスは大半の説明をすっ飛ばして天音を送り込んだ為、メニューの項目の殆どをヘルプを見ながら自分で確認しなければならなかったのだ。
勿論、好奇心に負けた天音も悪いと言っちゃ悪いのだが。
「取り敢えず、今の状況を調べるか」
すっかりヘルプの扱いに慣れた天音は現在の自分の状況を整理すべく、情報を集め始める。
最初のコメントを投稿しよう!