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30分程歩くと森の入口へと到着した。東の森は鬱蒼としているわけでは無く、木々の密度もさして高くない。適度に日が指しているため森の中をピクニック気分で歩くのも悪くない、などと見当違いの事を考え始める天音。
直ぐに頭を降ってそんな考えを打ち消すと、腰に差していた『自らの得物』の柄に手を掛けた。
「さて、確か神様特典で最初の一回までは死んでもリスポーン出来るんだよな?」
ヘルプによれば、全てのプレイヤーは一度めの死亡時にかぎり蘇生される。二回め以降は蘇生用の魔法やアイテムを使用しないと死亡する。これはゲーム状の死では無く、文字通りの死だ。
天音のように自ら望んで此処に来たわけでは無い人間ーーーそれこそ面白半分でこのゲームを開始した者には正に最悪なペナルティーとも言えよう。
「まあ、そうそう死ぬ気はしないけど……」
天音は優れた人間だ。自分がどういった面に優れているのかをキチンと把握していて、それでいて自分の能力を測り違えたりしない。故に彼は自分にとってベストのステータス振りをしたし、職業もーーーいや、職業は多少冒険したが、そう言った部分を含めて最適な選択をした。
「ふふふ……楽しみだなぁ、戦闘」
戦闘する前からバトルジャンキーの気が見られる天音は、元の容姿もあってかかなり妖艶な笑みを浮かべている。最も、本人は無意識のウチに浮かべているのだが。いよいよ直前に迫った初戦闘に心を踊らせながら、天音は軽い足取りで森の中に足を踏みいれた。
森の中は木漏れ日が心地良く、空気も澄んでいてとても過ごしやすい環境になっていた。にも関わらず人がいないのは、やはりモンスターの影響なのだろうか。
憶測を巡らせながら歩くこと5分程。天音の前に、最初のモンスターが姿を表した。
「……猪?」
茶色い毛皮に身を包んでいる大柄の猪。160半ば程しか無い天音の背丈を悠々と超すその体躯は2mはありそうだ。鼻先には鋭くも雄々しい角がそそり立っており、それに突かれでもしたら麻の服を着ている天音では串刺しにされる事間違い無しである。
しかし天音は怯むどころか楽しげな笑みを零すと、腰に差していた得物を構えた。
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