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「いらっしゃい、嬢ちゃん!見ない顔だが新人か?俺はここの店主を任されてるキースってんだ。よろしくな」
「俺はアマネです、よろしく。……それと、俺は男です」
「おっ?そりゃ失礼したな、アマネ!で、今日は何の用だ?つっても、素材の売買しか用はねぇわな!」
豪胆に笑うキースに少し引き気味の天音だったが、取り敢えずアイテムの鑑定を行ってもらう事にした。取り出したアイテムはコボルトの毛皮×5、狼の毛皮、狼の牙、猪の肉塊、猪の牙と本日の戦利品全てだ。
「ほう、こりゃあ中々……。アマネが一人で集めたのか?」
「ええ、一応。そういえばキャリーさんにも驚かれたなぁ」
「ほー。でも全部売っちまっていいのか?一応、素材は武器やら防具やらの生成、強化にも使えるぞ」
「今の所、装備に困ってないし構いません。それに一日にどれだけ稼げるか調べて見たかったし」
何の気なしに言った天音の言葉にキースは酷く驚いたように目を丸くした。
「お前さん、今日一日でこんなにモンスター討伐して来たのか!?コボルトやらウルフはともかく、ナックル・ボアまで!?」
キャリーの時と同じようなリアクションに思わず苦笑いを零した天音。
ナックル・ボアは確かにコボルトやワイルド・ウルフに比べてHPは多かったが、攻撃は単調でさして苦戦するような相手では無い気もする。キャリーやキースの反応を見る限り、それは天音の偏見なのが良くわかるので口には出さないが。
「兎に角、査定をお願いします。」
「お、おう。……コボルトの毛皮が全部で150、狼の毛皮が60、狼の牙が100、猪の肉塊が120、猪の牙が200イリスでの買取になる。どうする?」
「全部売ります」
「毎度ありぃ!530イリスだ、確認してくれ」
「……はい、確かに。あっ、後、この辺りに服飾関係の店ってありませんか?」
「この大通りを南に10分ぐらい進めばあった筈だぞ。……それより、鎧とか買った方がいいんじゃないか?」
「まあ、それもそうなのかもしれませんね。ご忠告ありがとう」
そのままキースと別れた天音は予想以上の収穫にすっかり浮かれていた。鼻歌混じりに街を丸く彼はその容姿もあって周囲の視線をさらっていたが、すっかりご機嫌な天音は珍しくそれに気づかずに服飾屋を目指して歩いて行くのであった。
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