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「お、君も夜の狩りかい?いやぁ、最近の冒険者はやる気に満ちてるねぇ。感心感心」
門を潜ろうとした時、門番に声をかけられた天音は首を傾げた。宿屋のおばちゃんの話を聞く限り、夜のフィールドに出る人間は早々いないようなのだが……。
「夜の狩りに出る人って少ないんですよね?」
「そうだ。夜は危険だからな、好き好んで狩りに出るやつは殆どいないさ。それこそ、急ぎでレベル上げやら金を集めたいような輩だけだ。
しかし、最近急に夜も狩りに出る冒険者が増えてなぁ。まあ、街の周りの安全は確保されるし、ありがたいんだが。……お嬢ちゃんも気をつけていけよ」
「ありがとう」
門番と別れてフィールドに出る。天音の性別を勘違いしていた門番であるが、最早慣れっこである天音は一々指摘をすることもない。それよりも、サイクロプスに一刻も早く遭遇することの方が今の天音には大切なのだ。
地球とは異なり、二つの月のようなものが暗黒の世界を照らしている。一応、視界は確保できているが少し心許ないので街中で買ったランタンを腰のベルトにかける。
目を凝らしてフィールドを見渡すと、ランタンと思わしき光点がポツポツと見える。夜の狩りに出ているもの達だろう。そして天音の推測が正しければその殆どは自身と同じプレイヤーの筈である。
こうして性急なレベリングに勤しむ者達は、それこそ単なるバトルジャンキーか、天音のようにゲームでありながら現実世界でもある、この世界の矛盾に気づき、危惧されるであろう問題に気付いているもの達なのだろう。天音も索敵を行いながら歩調を早めていく。
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