第2章-レベリング-

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既に数えるのも億劫になる程に倒したスケルトン達により、東の森に辿り着く頃には天音のレベルは5に上がっていた。 夜のフィールドは正にスケルトンフィーバーであった。昼間の森とは比べものにならないエンカウント率で出現するが、個体経験値はコボルトにすら劣るほど低い。 といっても、必ずといって良いほど集団で現れるのでそれなりの経験値にはなるのだが、多数のモンスターを相手にするとそれなりのリスクが伴う。そのリスクと経験値の折り合いが合わないから夜のレベル上げが忌避されるているのだろう。 しかし、それでもプレイヤー達の中で夜のレベル上げを決行する者がいる。それは恐らく、このゲームの本質を理解している者達だろう。 この世界は異世界であり、ゲームの構成する電脳世界では無い。あくまで世界に干渉し、ゲームのようなシステムを後付けで追加したに過ぎない。故に世界の本質は電脳世界とは根本的に異なるのだ。 自分達の命も一つしかないし、それはこの世界に存在する全ての生物にも言える事だ。ゲームの世界のように、一度倒されたモンスターが都合よく再出現(リポップ)したりしない。魔法という概念がある以上、一部の例外はありそうだが、基本はそうなのだ。 故に、経験値は有限だ。しかもゲームを開始したプレイヤーは三つの国に分けられるものの、それぞれの国の『初心者の街』という狩場に殺到するだろう。 幸い、天音は比較的早い段階でゲームを開始したプレイヤーである。しかし、メニュー画面で確認出来るプレイヤーの数は徐々に増して行き、このペースだと一週間とかからずに1000人を突破するだろう。 単純計算で300人弱がルクセルに殺到するとなると、近場のモンスターが狩り尽くされるのも時間の問題だ。 モンスターを倒せないという事は、レベルが上がらないという事。そしてレベルが低いという事は、この世界ではそのまま死に直結する問題なのだ。 天音がサイクロプスを狙うのも結局は其処に起因する。名前からして初心者では倒せないレベルのモンスターなのは想像に容易い。 しかし、やがて天音と同じような考えの輩がパーティーを組んで討伐するだろう。宿屋のおばちゃんの言い方から察するにその個体数は少ないハズ。つまり、その恩恵を受けれるのは本当に少ない人数のプレイヤーになる。 こんな美味しい話を、天音はみすみす見逃せるわけもなかった。
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