第2章-レベリング-

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「……ん。誰か、いる?」 森の入口付近に光が存在している。天音の持つランタンとは少し種類の違う光は、恐らく魔法だろう。どうやら向こうも天音に気づいたようなので、取り敢えず近づいて見る事にした。 「こんばんわ、お嬢さん。こんな夜遅くにレベルの上げ?でもこの森は危険だからやめた方がいいよ」 手元に光を放つ球体を備えている銀髪の青年が、何処か作り物のような整い過ぎた顔に笑みを貼り付けていた。何か見覚えがある思ったら、今朝天音にウィンクをかまして来たプレイヤーである。 そんな彼の横には赤い短髪を逆立てた剛毅な顔立ちの青年と、金色の髪をツインテールにしている赤と青のオッドアイの少女が控えている。索敵スキルを発動すると、その二人もプレイヤーである事が分かった。 「わざわざご忠告ありがと。でも大丈夫だよ。一応、此処の敵はもう倒してますし。それと俺、男ですから」 「あはは、面白い冗談を言う子だね!それに、そんな可愛い子を守るのが勇者である僕の役目でもあるのさ。もし良ければ僕達のパーティーに入らないかい?」 あれ、こいついきなり何を言い出すんだろう?と天音が割と本気で首を傾げているとは露知らず、目の前の青年ーーーカインからパーティー招待のメールが送られてくる。 「……あの、話聞いてましたか?俺は遠回しに一人で探索行きたいから邪魔しないでって言ったつもりなのだけれど」 「君のような美しく、可憐な女性を一人で送り出すとなれば勇者の名が無くよ。此処はどうか、このカインに騎士の役目を授けてはくれまないかな?」 (あ、ダメだこいつ。完璧に役割(ロール)に酔ってる カインの後ろにいる二人は仰々しく一礼する彼に絶対零度の視線を送っているが、当の本人はまったく気づいていないどころか、最高に決まっていると思い込んでいるのだから始末がつかない。 「……はぁ、わかったよ。臨時でいいならパーティーに入ってやる」 おもわず口調が崩れるがそれも仕方ないだろう。結局、これ以上滑稽な一人芝居を見せられるのも癪なのでパーティーに参加することにした。喜々とした様子で声を上げようとしたカインだが、それは続く天音の言葉に遮られる。
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