第1章-ゲームスタート-

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ーーーーーーー ーーーーー ーーー 光が晴れる。天音の目の前に広がるのは新緑の大地。日本にいた頃にはネットでしか見たことのないような、広大な草原だった。雄大な草の絨毯はどこまでも続いているようで、そよ風に揺れる草原はまるで新たなプレイヤーの誕生を歓迎しているかのようだった。同時に草の甘い薫りが鼻をつき、これが現実だと天音に告げているようだ。 しかし、同時にこれがゲームである事を天音は知っている。知っているが故に、そんなおかしな矛盾に笑わずにはいられなかった。 一頻り笑った天音は自身の格好が変化している事に気づいた。麻のような肌触りの素材で出来た質素な服装に旅人がつけていそうなローブ。腰には、無骨なショートソードが備えられている。恐らく、このありふれた旅人のような服装が初期装備なのだろう。端麗な容姿の天音がきると非常に違和感がある服装だが、本人自身は趣きのあるそれらしいこの格好を非常に気に入っていたりするのだが。 「取り敢えず、街に行くか」 何をするにも、まずは情報が必要だろう。セルヴィスは世界を救えと行ったけれど、その具体的な方法までは示していない。現在進行形でこの世界が危機に晒されているのか、はたまたこれからそういった出来事が起こるのかすらも聞かされていないのだ。まったくをもって頭が痛い話である。 とりあえず、遠目に見える一つの街に向かう事にした天音は歩き出す。異界、イースの大地を踏みしめて。
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