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俺とキシロは学年は一緒でもクラスは別で、決して親しい仲ではなかった。ゲーセンで会った時に”奥寺”という俺の苗字を覚えていた事が意外に思える程接点は少なかった。
キシロの白い透き通るような肌に触れてみたい。
そう思うようになったのは、一年の二学期から始まった数学の少人数教室でキシロの斜め後ろの席になった時からだった。それが俺とキシロの唯一の接点だった。
自由な校風によって許されていたキシロの金色の髪は、くせっ毛なのかパーマなのかゆるくカールがかかっている。その髪の間にのぞく耳からうなじにかけてのラインに、こみ上げてくる衝動が性的なものだと気づくのに時間はかからなかった。
男子校だからだとか、思春期だからだとか、性的に満たされたいとか、いろんな背景があったのだとは思うけれど、俺は日に日にキシロに対してモヤモヤとした想いを抱えるようになってしまっていた。
そう、きっかけはそんな些細な事から始まり、キシロの物憂げな表情も、人を見る時睨みつけるような目つきも何もかもが胸の奥にひっかかるようになっていった。
永遠に交わる事のない相手だからこそ、妄想の中でずっと犯し続けられる、そう思っていたのに、ある日突然俺はキシロを自分のものに出来るきっかけを得てしまった。
ゲーセンの一件があった翌日の昼休み、体育館倉庫にキシロを呼び出すと素直に奴は現れた。4時間目はきっと体育だったのだろう。ルーズに着こなしたジャージ姿で、時間より少し遅れて現れたキシロは上目遣いで俺を見つめていた。ふと、ジャージの名札に目をやると、”柏葉”の”葉”の字がほとんど消えかかっている。
「…キシロ」
ふと俺はそう呟いていた。
「は?なんだそれ?」
キシロは首を傾げて俺の視線の先にある胸元の名札を確認した。
「ああ、柏だからキシロか…。葉の部分書く時、マジック薄くなってたから消えたんだよ」
「ふぅん」
しばらく間があって、俺はしばらく無表情なままキシロを見つめていた。そんな視線に耐えられず先に口を開いたのはキシロの方だった。
「あのさ、奥寺って…」
「ん?」
「ホモなわけ?」
「いや、そうじゃない、と思う」
男だからとか女だからとかそういう理由でキシロに惹かれたわけではない事はわかっていた。なので同性愛者と名乗るのは同性愛者に失礼な気がしてならなかった。
「じゃあなんなんだよ…あれ、昨日のは冗談…なわけ?」
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