†第0章† プロローグ

2/3
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
灰色の空。白い雪。 凍えるような冷気に身を包みながらも、彼は誰も居ない公園のベンチに腰かけていた。 時折、空から落ちる雪が顏に当たり、冷たく、寒くも感じたが、彼は虚ろな目で空を見上げてただただ降り注ぐ雪を眺めた。 ―――まるで、僕の心を体現したかのような天気だ。 彼は自身の憂鬱な気分からそう感じたが、そんな考えもすぐにかき消された。 ―――寒い。 寒空の元、公園のベンチに長時間座っていた所為か、体温が冷えていた。 はたから見れば、頭が可笑しいと思われても可笑しくない。 別にこの場に居る理由など彼にはないが、あえて言うのであれば今この場において自身の条件に適った理想的な場所だったからだ。 1人になることが出来、静かに過ごせる。 寒ささえ、我慢すればそれなりにいい場所である。 しかし、その寒さも次第に慣れが生じ、彼は何も感じることはなくなった。 それから、何秒、何分、何時間経っただろうか。 時間の感覚さえも狂い初めているように感じた時、彼は一息吐いた。 「何もかもがどうでもいい。過去も現在も未来も」 無表情に彼は呟き、溜め息を吐いた。 誰かに聞いてもらうことでは無く、ただ自身の内側に溜まった物を吐きだそうとしているように呟く。 日頃の人間関係が面倒、人生や将来とか考えるのが面倒・・・不満を言えばきりがない程出てくる始末。 しまいには世界が滅びようが、生きようが死のうが自分の命すらどうでもいいと考えている。 ここまで来ると、最近何か辛いことや悩みがあったのではないかとおもえるが、彼にそれといって特にない。 かといって、全く嫌な事が無いと言うわけでもないが、どうすることも出来ないから放置しているのが現状だった。 ―――いや、ただ単に不用意に手を出したくないだけかな・・・。 彼は自身の脳内で訂正し、自嘲した。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!