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「本当につまらない。飽き飽きするほど退屈な日常だ」
周りの煩わしさや面倒さ、厄介さなどを全てひっくるめて彼の今まで通りの日常であり、酷く退屈で乾いた日常だった。
例えるならば、籠に入れられた鳥のような気分だ。
自由という自由が無く、何もできなく、何をしたいのかも見つけられない苦しみを永遠と味わい続けること。
だからと言って、非日常こそ彼は欲してはいなかった。
平凡でも地味でも構わない。
この退屈で不満ばかり湧く日常を壊す刺激が欲しい。
つまらない日常だと感じているからこそ、彼は常に欲していた。
それで自分の命が失っても、彼はおそらくなにも気にとめないだろう。
それが狂気じみた考え方であっても、唯一彼の渇望を癒す手段だろうからだ。
この苦しみは誰にも分からないし、分かったとしても誰にもどうすることも出来ないだろう。
どうにか出来るのであれば、彼自身が実行している。
だからこそ、苦しみともどかしさに満ち溢れていた。
「そろそろ日が落ちて来るかな」
彼は空の色と公園にある時計を見て、帰宅するのに頃合いだと判断した。
「やれやれ、家に帰るのが怠いな」
また溜め息を吐くと、今までとは打って変わり、無表情から笑顔に変わった。
まるで、笑顔の仮面をつけた道化の様に全てを偽る表情のような笑みを浮かべて。
今までの憂鬱な気持ち、苦悩など一切なかったことにしたと感じる様に仮面で隠し、彼は帰宅した。
もう間もなく、雪月白夜(ゆきづき びゃくや)の望みを叶える出来事は否応無しに強制的に訪れることになる。
それが天国であろうが地獄であろうがだ―――
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