The eye and the angel.

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 ――――数時間後、セントラル地区、裏通り。  パルスのマンションを後にした二人は、セントラル地区のある裏通りを歩いていた。  セントラル地区はこの街――――エンパイア全体の行政の大部分を担っているだけあって、裏通りとはいえ、多くの事務所や公共機関が立ち並んでいる。今日は休日ということもあって、人通りはないに等しい。 「――――なあ、こんなところに来て、どうしようっていうんだ? 俺が狙われているっていうんなら、あまり外に出ない方がいいんじゃないか?」  不安げに辺りを見回しながら言うトワに、パルスは視線も返さない。 「大丈夫よ。奴らがもっとも警戒しているのは、自分たちの犯行が表に出ること。よっぽどの自信がなければ、昼間から仕掛けてくることはないわ」  冷静なその口調は確かにそうと思わせる説得力を持ってはいたが、トワはどうにも落ち着かない。左目に何も見えないことから、彼女の言うことが正しいことはわかるのだが、命を狙われているのだから、落ち着いてもいられない。
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