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額に浮いた汗が、急激にそのぬくもりを失う。パルスの言葉と同じく冷たくなったその汗は、ぽたり、とトワの頬から床へと落ちた。
「――――狂ったリンゴ……」
「――――え?」
思わず口を突いて出た言葉。それは、常々トワがこの街に対して持っていたイメージそのもの。
「狂ったように熟れすぎたリンゴは、やがて地に落ちる。狂って種を持たないリンゴは、ただ落ちて潰れるだけ――――そんなところか」
続くトワの言葉に、ミズトが合点がいったという表情で頷く。
「なるほど、言い得て妙だね。確かに、そんなところだ。だが、まだ事態は手遅れじゃない。今の段階で暗殺を行う企業を止めることができれば、リンゴがすぐに落ちることはない」
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