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そりゃあ、俺だって義理でもいいから一つぐらいは、って思ってたよ。朝、学校に来てみると、机の上に置かれたチョコレートらしき赤いハートの箱。両手サイズで、可愛らしくピンクのリボンでラッピングされている。それだけなら、素直に喜べたのに‥‥
可愛らしいピンクのリボンには、メッセージカードが挟まれていた。
『危険! 触るべからず』
俺は一体、この不審物をどうしたらいいのだろうか……
こんなことするのは、彼女しかいない。しかし、隣の席を見ても空席でーー もう二ヶ月にもなるのにーー葬式にも参列したというのにーーミチルの病気が治り、隣の席で元気に笑ってるところを想像してしまうのだ。
「おう、蒼佑。おはよう」
「おう‥‥」
例の不審物を悪友、伊藤蓮司の目が捕らえた。
「なんだよ、チョコの自慢か?」
冷やかしてやろう、そう顔に書いているかのような、意地悪そうな顔が隣にやってくる。
「ちげえよ。見てみろよ」
先程までのにやけ顔が嘘かのように、見る見るうち顔が渋くなっていく
「なんだ、これ……」
「どうしたらいいと思う?」
しばらく考え込んだ後、ヤツはとんでもないことを言い出した。
「開けてみれば?」
「マジで?」
蓮司は首を大きく縦に振った。
「いやいやいやいや」
俺はメッセージカードを指差す。『危険! 触るべからず』だぞ!? 蓮司はそっと俺の背中を押す。
「大丈夫だって! 何びびってんだよ」
「べ、別にびびってなんか……」
ムキになってリボンに手を伸ばすが、あのメッセージカードがそれを阻むのだ。
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