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薄暗い階段を駆け上がり、屋上の扉を思い切り開ければ、眩しいほどに太陽は輝いていた。
「ミチル!」
しかし、彼女の姿は無くて…… 誰もいない屋上の真ん中にぽつりと置かれた白い封筒。重石代わりなのか、その上に見覚えがあるピンクリボンと赤いハートの箱。
そっと近くに腰を下ろし、封筒を手に取る。蒼佑へ、そう書かれた封筒の裏には差出人の名前ーーミチルの名前ーーが書かれていた。封筒の中の、二つ折りにされた手紙をゆっくりと開く。
「バカって、なんだよ」
思わず笑いと共に出た言葉は、苦しいほどに胸を締め付けた。
好きだ、バカ
そう一面に大きく書かれた手紙を、頬を伝って流れてきた涙が濡らした。
「俺もーー」
俺も好きだよ、バカーー もう伝えることのできない言葉を涙が飲み込んでいった。
箱のリボンをゆっくり外していく。中にはチョコレートを象った手作りのマスコットキーホルダーが入っていた。
「本当はここで曲が流れる予定だったんだけどな」
振り返ると、そこには蓮司がいた。
「お前がビビるから」
「だったら、なんであんなメッセージカードを?」
蓮司は懐かしそうに笑う。
「ミチルが言い出したんだ。お前の狼狽える顔かが見たかったんだとさ」
「なんだよ、それ」
俺もつられて笑ってしまう。確かに彼女らしい。
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