赤髪の剣士

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何だか訳のわからない内に、俺は訓練場広場の真ん中で剣と盾を構えていた。 目の前には、一本の少し長細い剣を持って構えるディンがいる。 「言っとくけど、女だからって油断してると怪我しちゃうわよ」 確かにディンの言う通りだ。 彼女は強い。 下段に構えた剣先は、彼女の正中線にある。 それに足も常に踏み込める位置だ。 「わかった」 そう言って、俺は剣を構えた。 「はじめっ!!」 開始の合図と共にディンが風を切る速さで突進してきた。 「うわっ!」 不意を突かれた速さだ。 でも、反応出来ないわけじゃない。 キィン! ディンの初撃の突きを盾で防いだ。 「ふふ、なら次はコレよ」 盾に当たる剣の感触が消えた途端に、眼前のディンが消えた。 上?…違う!! カカキンっ!! 目にも止まらぬ速さで、俺の上に飛び一撃。そして、俺の背中に着地して一撃。 一瞬で二太刀も繰り出すなんてとんでもない人だ。 「とんでもない人ね、アナタ。アタシの剣技を見切ってる。剣で上を防いで、盾で背後も防いだ」 サーカスの曲芸師と闘ってるみたいだ。 こんな剣士がいるなんて…。 二人の剣のぶつかり合いは、タナスト含め兵士達をも黙らせる程激しかった。 ディンと闘ってここまで互角に渡り合える者などいなかったからだ。 この国の重騎士長であるタナストでさえ、ディンに3分もかからない内に敗北しているというのに。 「せぇえやっ!!」 回転切りを剣で防いだディンは、空中でバク転して地面に着地した。 本当に曲芸師みたいだ。 「やるじゃない。次いくわよ」 ディンの構えが変わった。 上段構えだ。 「ありゃあ、『冬の陣』だ。いつもの『夏の陣』を解いた」 タナストの頬に汗が伝っていた。 「もしかしたら久し振りに見れるやも知れんぞ。ディン殿の『四季の陣』が!」
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