第1章 予兆

2/8

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
窓から差し込む光で僕は目を覚ました。 ベットから起き上がり窓の外を見る。外では、近所の子ども達が遊んでいた。 そんなほほえましい光景から目を離し、下の階へと降りようとすると「ケイル~」と僕を呼ぶ声がする。母さんだ。慌てて階段を降りていくと母さんが朝食を用意していてくれた。 食卓につくと、母さんが話しかけてきた。 「ケイル、私は今日、グーラおばあさんのとこにいくけど、あなたはどうする?」 グーラおばあさんとは、このフィカ村のはずれに住んでいる変わりものの薬師で、村のみんなから信頼はされているのだが本人が人間嫌いのため、あまり他の人に会おうとしない。しかし、どういうわけか母さんはこの変わりものと仲が良く、頻繁に家に行っている。 「グーラばあさんか・・やめとくよ、叔父さんの家ももう少し探索したいし。」 「また、叔父さんの家にいくの?ほどほどにしたほうがいいわよ・・」 母さんは少し顔を曇らせながら言った。 なぜ、親族の話で母さんがいいよどむのか、その原因は数か月ほど前にあった。 僕の叔父である、ローガン・ルメインは名高い探検家だ。 いや、「名高い探検家だった」 なぜなら今、叔父は罪人ということになっているからだ。 数か月前、遺跡調査に出かけた叔父と連絡が取れなくなってしまった。 その後、王国近くの町に視察に来ていた王族を何者かが襲ったらしくその「何者か」こそが叔父だというのだ。護衛騎士団の何人かが顔を目撃しており、ほぼ間違いないと言われている。その確認と調査のため僕の父さんは今、王宮に呼び出されている。 しかし、僕はあの叔父さんがそんなことをする人には思えない。なにか理由があるはずだ。そこで、その手掛かりがないかとここ数日彼の家を探索しているのだ。 「わかったよ、もう少しだけ見たらあきらめるから。」 そう言い残して僕は家から出かけた。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加