第1章

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初日のヨガレッスンは無事に終わった。スタイルがよく若々しい奥様の美の秘訣はこれに違いないと思った。 激しい運動ではないけど、体が熱くなっているのがよくわかる。これって気がめぐっているってことなのかも、と素人考えで思った。 みつ子さんが迎えに来てくれて無事に部屋に戻り、感激しながら部屋の中のシャワーを浴び、さっぱりしたところで、ダイニングルームに連れて行ってもらった。 重厚な額の絵画に囲まれた広いダイニングルームは、部屋の中央に大きな長いテーブルがおいてあり、みんなが既に着席して、あたしに笑顔を向けてくれた。 一番奥に家元、テーブルを挟んで奥様と智樹さんが向かい合い、航くんは奥様のとなりで子供用の足の長い椅子にちょこんと座っている。 見たことはないけど、ヨーロッパのお城の食事風景はこんな感じに違いない。 「おはよう、菜月さん」 家元が昨夜と変わらぬ温かい笑顔で迎えてくれた。 ぎこちなくみんなに挨拶をしていると、みつ子さんが、航くんの向かいの席、つまり、智樹さんの隣の席の 椅子をひいてくれ、目で合図した。 あたしの席はそこなのね。智樹さんの奥さんなんだもんね。 照れつつうなずき、智樹さんの視線を感じながら、固い動きで席に座る。 「おはよう、菜月」 「お、おはようございます」 爽やかな笑顔の智樹さん。 なんだか恥ずかしくて、すぐ目を逸らしてしまった。なんといったって新妻初日なのだ。 「さあ、みんな。今日から鷹司家の一員となる菜月さんだ。よろしく頼むよ」 気がつくと、みつ子さんや昨日のカーチェイスの森野さん、他の使用人の方々もずらりと並んで皆が一斉にあたしに向かって頭をさげた。 あたしは驚いて立ち上がり、 「よろしくお願いします」と慌てて深々と頭をさげた。 その勢いに皆一瞬驚き、 それが笑顔となってあたしを温かく包んだ。 「結婚式は、落ち着いたらと考えているが、みんなも知ってのとおりもう入籍済みだ。菜月さんはこの鷹司家を継ぐ智樹の大切な伴侶だ。私たち同様に皆で支えてやってくれ」 「はい」 みなさんは笑顔でうなずいてくれた。 ああ、なんて心強いのだろう。あたしは再び深くお辞儀をした。いい人たちばかりで夢のようだ。もし夢でも覚めないで欲しい。 「さあ、それじゃあ食事にしよう。航はもう朝食は済んでいるから、ココアにするか?」
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