財布はカタル

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 ここは親戚が経営している店ということで、働きもせずぶらぶらしていた私を体よく押し込んだとも言える。親戚と言ってもかなり遠い親戚で、私はこの店に来るまで会ったことはおろか、その存在すらも知らなかった。なんでも私の母の弟、つまり叔父さんの奥さんが店長のお姉さんだと言うことだったが、何親等になるのかすら分からないくらい離れた親戚ということで、感覚的には他人みたいな物だった。そのため、私は彼のことを店長と呼んでいる。  店長は本名を向智恭太郎といい、この店の名前は店長の名字と同じ向智貴金属店と言った。なんでも、創業百年近くの歴史を持つらしく、店長の曾祖父が始めた店なのだそうだ。
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