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「良いんですか?」と、尋ねると、石榴刑事は小さく頷く。私はお言葉に甘えて新しく私の前に置かれたケーキに手を伸ばす。フォークを使って切り分けた一切れを口の中に運ぶと、ほんのりとした甘さはとても口当たりよく、思わず頬が緩んでしまう。 「これ、おいしいですね」  私が我知らずつぶやいてしまうと、店長は、 「そうでしょ?」と、自分の手柄でもないのににこにことする。そして、元々私の前にあった皿を心なしか自分の元に引き寄せた。一度上げた物を取ったりはしないのに。 「しかし、テレホンカードを使われたからと言う理由で殺人まで犯すとは」  大野刑事は割り切れない表情でそうつぶやくと、ケーキの一切れを口に運び、苦いものでも食べたかのように表情をゆがめる。 「物にどれほどの価値を見いだすかなんて人それぞれなんですよ。例えばお金だったり、例えばテレホンカードだったり、例えば甘い物だったりね」  店長はそう言うと、幸せそうな表情を浮かべながら、私が上げたケーキにフォークを入れた。
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