写真機はカタル

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「いらっしゃいませ」  私は半分驚きと共にその言葉を口にする。この店に来客だなんて、明日は雨だろうか? などと失礼な事を思いながら笑顔を浮かべる。しかし、来客はまだ十代半ばくらいの女の子で、その時点であれ? と思った。 「すみません、ちょっと良いでしょうか?」  少女はあっけにとられた様に店内を見回しながら尋ねてくる。店の作りがあまりにも古風で驚いているのかもしれない。明治時代に作られたというこの向智貴金属店は、大きな改修などしないまま、現在まで存在している。初めてこの店を見た人間は皆、彼女と同じような反応を示す事だろう。しかしそれなら外から店構えを見た時点で気がつきそうな物だが。
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