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「何だったんですかね」  店長は唖然としたように彼女たちが出て行った扉を眺めている。 「何だったんでしょうねえ」  私も店長と同じ言葉を繰り返し、お互いにため息を吐く。 「あの、すみません、私が口を滑らせたせいで」  店の隅からそんな声が届き、私はぎょっとした。慌てて声のした方向を見ると、少女達からアサリと呼ばれた女の子が店の隅にまだたたずんでいた。 「いやいや、お客さんを連れてきてもらったんですから、あなたは何も悪くありませんよ」  店長が慌てたように言いつくろう。しかし、彼女たちは結局何も買っては行かなかったのだ。そんな彼女たちを客と呼べるのだろうか? 私はそんな事を思いながらも、 「そうですよ、気にしないでください」と、笑顔を作る。
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