281人が本棚に入れています
本棚に追加
「何で拳銃が!?」
警察官の一人がそう叫び、同僚がいる方向を向くと、その同僚の持つ拳銃もボロボロになって崩れ落ちており、その様子を四人は呆然とした表情で眺める。
その明らかな隙を二匹のゴブリンは当然見逃さない。ゴブリンの内の一匹が奇声を上げながら警察官に接近し、ナイフでその警察官の腹部に深々とナイフを突き刺す。
「あ、あ。ぎゃああ!」
腹部を刺された警察官は刺された部分を押さえながらその場で倒れ、余りの痛みに叫び声を上げる。
その内にもう一匹のゴブリンもナイフをもう一人の警察官に突き刺そうとしたが、それは回避された。どうやら、ゴブリンは研究所にいた化け物ほど身体能力が優れている訳ではないようだ。
「ワタル君、逃げるぞ。叫び声を聞きつけて他の化け物達が寄って来るかもしれない」
ミズキのその発現は、暗に警察官は見捨てろと言っているようなものだったが、ワタルも丸腰でナイフを持つゴブリンを相手にはしたくはなく、頷くしかなかった。
能力をゴブリン相手にも発動できるか試してみたくもあるが、もし操作できる化け物の数に限りがあるなら、この目の前の余り強そうではない生き物には使用したくない気持ちもワタルには少しあったが。
二人はその場から逃げ出し、ワタルは後ろからゴブリンが追いかけて来ていないことを後ろを振り返り確認する。
「はぁ、これはほんきで大変な事になりましたね。これからどうしますか?]
ワタルは呼吸を整えながら、ミズキにそう話しかける。
「とりあえずこの町から脱出しよう。だが、それより先にどこか大きなスーパーか、デパートに入ろう」
「え、でも今金を持ってませんよ? まさか」
「あぁ、火事場泥棒をする事になるが、このまま餓死したくはないだろう。あそこが良い」
ミズキが指さす先には大型のスーパーがある。今の場所から多少距離があるように見えるが、確かにワタルは今日は朝から何も食べていない。
このまま町を脱出して、もし、他の町にも化け物がうろついているのなら、今の内に食料を水を確保することは大切かもしれない。
二人が目的地に向かうまでに時々人の死体があった。魔物はかなりの数がこの町に侵入してきているようだ。幸い向かう道中で二人が化け物に鉢合わせることはなかったが、スーパーの中ではそうもいかなそうだ。店内からは人々の恐怖の声が聞こえてくる。
最初のコメントを投稿しよう!